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一応ノンフィクション
ごあいさつ
旅行に行けばなぜかコネタなトラブルに見舞われ、しかしなぜかきちんと目的地には着いている。 そして日常生活でも、なんでかコネタについてまわられております。なぜでしょう。
1.危ないとは、思っていた

語学学校の仲良しバカ4人組で、週末と月曜日をお休みしてチェコはプラハに旅行に行った。今回はウェイティンとカナコの企画に乗ったので楽チンだ。

初日こそ雪が降ったりしたが、おおむね晴れで観光日和で、2日目はプラハ城に行くというベタっぷり。

そんな中で、一つ気になることがあった。

まりっぺはずっと、お財布とパスポートをポシェットに入れて歩いていた。もう、いかにも「ここに貴重品が入っています」と言わんばかりのものだ。

だけど気をつけて必ず体の前に回していたから、あんまりおせっかいを焼くのもなんだし、と思って何も言わなかった。

しかし、であった。

プラハ城にはプラハを一望できる展望スポットがある。ここで写真を撮れば誰でもお約束の写真が撮れるということで、オフシーズンとはいえ少し人が多かった。

ここで私らはめいめいに別れ、撮影にいそしんでいた。

s-DSCF1090.jpg
こんな写真が撮れます

そしてそこで事件は起こったのである。
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2.お前が犯人だ

不穏な雰囲気を感じて振り向くと、青くなったまりっぺと、白人を詰問しているウェイティンの姿が目に入った。

ウェイティンは穏やかな男の子だから、これはただ事ではない。

「何があったのか」と、カナコと私も合流すると、ウェイティンが
「この男がまりっぺの財布をすった」と言った。

本当なのか、とまりっぺに訊くと、確かに財布がないそうだ。

そしてウェイティンは私と同じで、彼女のポシェットが気になっていて、ここでもずっと見張っていてくれていたのである。彼は自身もパリで財布を掏られたことがあるから、余計に敏感になっていた。こういうの紳士というのではないか、素晴しい。日本の男も見習え。

そして、そこで今詰問している男がまりっぺの財布を掏るのを目撃、その男がアラブ系の男と二言三言話した後、彼が捕まえたのである。

男は自分のポケットの中身を全部出し、
「その子は財布を掏られたのかい? 僕は警察を知っているから、一緒に警察まで行こうよ」などと言っているではないか。

この男は、まりっぺの財布を持っていないのだ。だが、コイツはアラブ人の男と接触している。

ウェイティンが「あなたのアラブ人の友人はどこにいるのか」と訊いても、「彼は知り合いじゃない。道を訊かれただけだ」と言い張るばかり。

膠着状態となった。
3.カードを止めろ

これでは埒が明かない。ここで4人雁首揃えていても仕方がないから、私は被害を最小限度に食い止める方向に動いた。

クレジットカードを止めなくてはいけない。

プラハ城に入るとき、門の近くで電話ボックスを見た。海外旅行において、トイレの場所と電話の場所のチェックは重要である。特に今回は、なんとなく嫌な予感がして、ことさら電話のマークが目に付いていた。

クレジットカードを止めると後が面倒くさいが、幸いと言うかまりっぺは帰国を2週間後に控えていた。背に腹は代えられない。

私はカナコをつけて、まりっぺに電話ボックスまで行かせた。私が行かなかったのは、犯罪人相手をするのはカナコより私の方が慣れていたからだし、一応最年長と言う気負いもあった。またどっちが怖そうだって言ったら、私の方が絶対怖そうだ。

しばし、私ら2人と白人男性のにらみ合い(と言っても、向こうはへらへらしていたのだが)が続いた。実はこの時点で男は財布を持っていなかったのだから、立場的にはこちらが100パーセント不利である。チェコの法律がどうかは知らないが、少なくとも日本で掏り・万引きは「現行犯・物品所持」していないことには、人権侵害と訴えられても文句は言えない。でも、それを悟られてはいけない。

ここで作戦変更となった。白人を泳がせて、アラブ人と合流したところを押さえようと言う事になったのだ。

私らは警察には行かない、とがんばっていると、白人の方も諦めてまりっぺたちが向かった門の方へ歩き出した。5メートルほど距離を置いて、私たちも男の後を追う。こいつがどこまで行くのかわからないし、アラブ人と合流しないかもしれない。でもやるのだ。
4.何で知ってんの?

時間にすればほんの数分未満、と言った感じだったろう。でも、ずいぶん長く感じた。男は歩き続ける。他の獲物を狙う様子もない。私たちもゆっくり後を追う。門まではまだずいぶんある。

すると、後ろから声が聞こえてきた。

“Hey Miss, Hey Miss!!”

なんだろね、と思いつつもウェイティンと白人をつけていたが、なんと後ろの人物は私の肩を叩いたのだ。

振り向くと、そこにはアラブ人の男が、何かをかざしている。

「あなたの探している財布はこれか?」

と、財布を見せてきた。かなりどびっくりしたのだが、冷静を装って中を検める。と言ってもまりっぺの財布だから、何がなくなっているのかは見当も付かないのだけど。

それでも中を見ると、確かにまりっぺの財布だった。学生証にクレジットカードがある。そして意外だったのは、現金もしっかりと残っていたことだ。だが、これに関しては、そのままの金額が残っているとは限らない。

それに何より、見ず知らずのこの男が、

何で私が「財布」を捜していることを知っているのか?!

しかし、とにもかくにも財布は戻ってきた。

ウェイティンと男を残し、私はまりっぺとカナコを追った。電話をかけるのを止めさせないといけない。

門までの道はかなり急だったけど、とにかく走る。

カナコが赤いニットキャップをかぶっていたので、二人はすぐに見つかった。やはりまだ電話にはたどり着いていなかった。

「この財布、あなたのよね? 中をすぐに見て!」
と、まりっぺに財布を渡す。

彼女は仰天して財布を受け取った。かなり混乱していたので、チェックするべきことを指示する。

・クレジットカードの数
・現金
・そのほかの重要書類


この辺が揃っていれば大丈夫だろう。

現金は抜かれていただろうな、と思ったら、意外や意外、なんと全部揃っていると言うではないか。

私としては何かが引っかかったのだが、それでも一応財布が戻ってきた事実には変わりがない。ウェイティンと合流するために、二人をおいて再び坂を下った。元気だなぁ、私。

ウェイティンは一人で坂を上ってきていた。そしてみんなと合流して言った。

「あいつら、後で握手してたよ。やっぱりグルだった」と。
5・結局何もなかったのだけど

旅行から戻り、まりっぺも日本に帰ったのだが、どうにも私には合点がいかなかった。

なぜ、財布は返ってきたのだろう?

そりゃ相手にしてみれば、当初は女性の一人旅だと思ったつもりが、男の子に詰問はされるし、他から眼光鋭い女はやってくるし、相当びびったに違いない。

だけど財布は運び屋の手にあるのだし、現金とカードを抜いて財布は捨ててしまえば良かっただけではないだろうか。

その財布が帰ってきた。まりっぺの話によると、本当に何にも盗られていなかったそうだ。

うーんと考えて、ありえそうな可能性として「カード番号を控えた」と言う結論に落ち着いた。

店で何かを買うことは不可能だが、2004年現在ではインターネットでの買い物は、カード番号入力だけで暗証番号とか必要がない。

まりっぺにメールを打って、念のためにカード番号は変えといたほうがいいうよ、と忠告しておいた。

普通に使っているだけでもスキミング被害を受けた友人が何人もいる(そのうちの一人は、その時期に自分がアメリカにいなかったことを証明するのに難儀した、とこぼしていた)中で、それでも何もなかったのだから、運が良いといえば言いのだが、用心に越した事はない。


終わってみて考えると、ずいぶん危ない橋を渡ったものだと思う。もしかしたら私はアラブ人に刺されていたかもしれないし、白人の言うことを信じて警察に行こうとしようものなら、どこに連れて行かれていたかわかったものではない。とにかく貴重品の管理は大事だ。